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自信溢れる子どもたちを増やす!自由でクリエイティブな読書感想文の書き方を教える舞台演出家・篠原明夫先生

30年以上に渡り、120作品を超える舞台の演出や脚本に携わってきた篠原明夫先生。舞台演出家や脚本家としての仕事に加え、コミュニケーションや育児を教える講師としてもご活躍されています。

篠原先生がストアカで活動を始めたのは2014年のこと。知人から「子どもに読書感想文を教えてほしい」と頼まれ、読書感想文講座をスタートしました。初年度は20名程度だった生徒も、年々増加していき、延べ生徒数は2,000名以上。

「大嫌いで苦手だった読書感想文が書けるようになって、自信満々になる子どもを日本中に溢れさせたい」と、力強く語ってくださった篠原先生に、これまでのご経歴やストアカをはじめたきっかけ、今後の展望などたっぷりと話を聞いてきました。

(取材日:2023年6月2日)

インタビューに答えてくれた先生
篠原明夫先生
舞台演出家・脚本家・研修講師・講演家
20歳から演出を学び、24歳から小劇場を中心に舞台演出家・脚本家としての活動をスタート。28歳から俳優を養成する講師としての活動も始め、能力開発と自己啓発をミックスした独自のスキルを確立する。スキルを生かし、教育機関、省庁、企業、専門学校、芸能養成所で、コミュニケーション講座、育児教室などを幅広く手がける。毎夏開催する読書感想文講座は、延べ2,000人以上の子どもが受講。予約のとれない講座として小学生の親たちの間で有名となる。著書に『脚本家が教える読書感想文教室』(主婦の友社)。

【ストアカ先生ページ】
https://www.street-academy.com/steachers/36271

ある舞台に心を打たれて、演出家、脚本家の道へ

ストアカ編集部(以下ーー):まずこれまでの簡単なご経歴から教えてください。

篠原明夫先生(以下、篠原先生):20歳から演出、脚本を学び、24歳から小劇場を中心に演出家や脚本家としての活動をスタートしました。そして、28歳から東京アニメーター学院専門学校で、俳優を養成する講師業もやるようになったんです。

ただ生徒との人間関係があまりうまくいかなかったんですね。なぜだろうと悩んでいたときにたまたま知人に声をかけられて、自己啓発セミナーに参加しました。自分の言動の裏にある感情や思いをじっくりと考えるような内容で、すごく感銘を受けたんです。生徒との人間関係が上手くいかなかったのは、感情や思いの表現の仕方が悪かったんだなと気づいて。それで習ったエッセンスを俳優養成の授業の中にも取り入れていくようになりました。

そうしたら、生徒からとても好評で。卒業した後も連絡をくれる生徒もいるぐらい、いい関係性が築けるようになっていったんです。

その成功体験から「教えることって楽しい。もっともっと教えたい」という思いを抱き、教育機関や省庁、企業、専門学校などでコミュニケーションや育児を教えるようになっていきました。現在は演出家、脚本家として活動する傍ら、講師業、講演業にも力を入れています。

ーー演出家、脚本家になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

篠原先生:現在は舞台の演出、脚本がメインですが、もともとは映画監督になりたかったんです。小学4年生ぐらいのときに、日活の『ともだち』という児童映画を観て、ものすごく感動して。だけど、周りの友だちは誰も観ていませんでした。

本当にいい映画だったので、友達が誰も知らないという事実が悲しかったんですね。どうやったら友だちが映画を観てくれるようになるだろうと必死に考えました。そして「ぼくが自分で撮った映画だったら観てくれるかもしれない」というアイデアが浮かんで、映画監督を志すようになったんです。

高校2年生までは、映画監督になる夢を追いかけていたのですが、生の舞台を観て衝撃を受け、「映像じゃない!舞台しかない!」って心を打たれてしまったんですよ。

それで大学生になってから、その劇団に入れてもらったんです。でもその劇団では脚本も演出も学ばせてもらえずに、音響を教え込まれました。23歳で劇団を辞めてから、音響を武器に多くの劇団の舞台制作を見ることで、脚本と演出を多くの先生から学ばせて頂きました。いや、昭和の演劇界ですから、教えてはもらえなかったので、ひたすら盗み続けました。

死の淵に立たされて湧いてきた「芝居をちゃんとしたい」という思い

ーーこれまで数々の作品に携われてきたと思いますが、印象深い作品はどのようなものでしょうか?

篠原先生:最近のことですが、今年の5月に行った朗読劇がとても印象に残っていますね。知り合いが描いている漫画『古代戦士ハニワット』という作品を朗読する劇をやらせてもらいました。

朗読劇と聞くと、ただ本を読んでいるだけで、面白くないと思う人もいるかもしれません。事実、ぼくもそう思っていました。だからこそ、普通の朗読劇にはしたくなかった。

それで色々な工夫を凝らした朗読劇を考えて実施したんです。例えば、漫画にはオノマトペ(擬音語や擬態語)がいっぱいあるので、それらを全部俳優に読んでもらったり、客席を360度囲う形で俳優を配置してさまざまな方向から声が聞こえるようにしたり。セリフとセリフ以外の音が同時にあっちこっちから聞こえるような朗読劇を開催したら、ものすごい反響があったんです。

「座る席によって全然違うと思うから」と言って、何度も観に来てくださる方もいました。また、ある方には「いままでにない演劇形態で、これは発明です」と賞賛していただきました。

つまらないと思っていた朗読劇で、ここまで面白いことができるのか!と、自分自身でも大きな気づきを得られた機会でしたね。

ーー『古代戦士ハニワット』の朗読劇には、お芝居に全く触れたことがない素人の方も出演されていたとか。

篠原先生:そうですね。ストアカで開催している講座「ザ・シノハラステージング・プレイヤーズレッスン」の受講生が出演してくれました。ただ実は数年前まで「ザ・シノハラステージング・プレイヤーズレッスン」にはあまり力を入れていなかったんですよ。

知人の裏切り行為にあって、お金がなくなってしまい、芝居を続けようにも続けられなかった時期があったんです。だから講師業、講演家としてどんどん仕事をするようにしていました。

でも2020年にコロナに罹って、3週間ぐらい入院したことを機に、再び芝居に力を入れだしました。人工呼吸器をつけて一時はかなり危険な状態にまで悪化したのですが、ベッドに横たわりながら「今死んだら絶対に後悔が残るぞ」なんて思っていたんですね。

後悔のない人生を歩むにはどうしたらいいのかを真剣に考えて、やっぱりもう1回芝居をちゃんとしたいと思ったんです。そして退院後に、ストアカにもう一度「ザ・シノハラステージング・プレイヤーズレッスン」の募集文を載せ直したら、人が集まってきてくれて。朗読劇だけではなく、今は舞台や映画も一緒に作っています。

知人からの依頼で始めた読書感想文講座

読書感想文を必死に書いている子どもたち。

ーー読書感想文講座をストアカで行おうと思われた経緯を教えてください。

篠原先生:2014年に知り合いから「子どもに読書感想文の書き方を教えてほしい」と頼まれたことが、きっかけです。最初は「え? 読書感想文ですか?」とびっくりしました。というのも、読書感想文を最後に書いたのは高校生のときで、そこから何十年も経っていましたし、そもそも人に教えた経験もありませんでしたから。

ただ子どもが好きだったので、やってみようと思ったのですが、如何せん知り合いの子どもにぶっつけ本番で教えるのは不安だったので、事前に場数を踏んでおきたいと考えました。そこで個人で講座を開催できる場所を探したところ、ストアカを見つけたんです。

ーーある種、練習の場としてストアカで講座を開いてみたわけですね。

篠原先生:はい、それでもありがたいことに生徒さんが集まってくれて、スタートした年は20人ぐらいでした。幸いなことに講座の評判は上々で、受けた方に満足いただけたことが自信になりました。

ストアカで教え方のコツが掴めたので、知り合いのお子さんにも教えたんですね。そしたら大絶賛していただいて。「これ、ちゃんと仕事にした方がいいですよ」と言われたので、翌年から本腰を入れて読書感想文講座をスタートしました。翌年は50人、その次の年は100人とどんどん増えていきましたね。

ーー読書感想文を教えるのは初めてだったと思うので、はじめは苦労されたんじゃないですか?

篠原先生:はじめは、子どもとの戦いみたいな感じだったんですよ。読書感想文が嫌いという子どもがほとんどで、親子喧嘩をして親が無理やり連れてくることも少なくありませんでした。

だから、当初は前説をしていたんです。「なんでこの講座を始めたのか」 「そもそもなんで感想文を書かなきゃいけないのか」という話を40分ぐらいして、子どもたちに書く決意を固めてもらうようにしていました。

前説の終わりには「今日は書き終わるまで帰れないですよ」と、多少圧力をかけるようにもしていましたし、ときには叱ることもありましたね。

ーーいまの先生からは人に圧をかけたり、叱ったりする姿が想像できないです!

篠原先生:自分自身も講座を通して、変化してきたんでしょうね。圧力をかけたら、子どもたちは怖がって余計書かなくなってしまったり、叱ると読書感想文を書くのが余計嫌いになったり。失敗から気づくことがたくさんあって、今はそういう指導は一切しなくなりました。前説もしていません。

子どもたちとの戦いと思っていた頃はピリピリした感じがあったのですが、現在は「この子たちはどうすれば読書感想文を好きになってくれるかな」と、腕が鳴るような感じです。

ーー読書感想文が苦手な子どもたちに寄り添うような指導をされていると。

篠原先生:子どもたちに読書感想文を教えておきながら、実はぼく、人の書いた本を読めないんです。自分の台本は読めても、他人の台本を読むのは嫌い。

家には数百冊と本がありますが、たぶん最初から最後まで読めた本は一冊もないんじゃないかな。「そんなぼくでも書けるし、教えることもできるんだよ」と言うと、子どもたちは笑ってくれて。それで安心するのかもしれないですね。

ーーたしかに、そういうエピソードがあると、先生への親しみが湧きやすいですね。

篠原先生:講座や子どもたちへの向き合い方が変わったことで、リピーターさんも増えてきました。基本的には「書き方を覚えて、来年は自分で書くんだよ」と教えているのですが、「家で書くより講座で書く方が早いから」とか、「去年賞状をもらうことができたから、報告がてら」とか、何度も受講してくれる方もいます。

中には「夏休みに一回は先生の顔を見ないと嫌だ」という子もいて。ひと夏に3回も感想文を書きに来る子や、感想文の他に『税の作文』や『本のPOP作り』もお願いします!って、会いに来てくださる方もちょこちょこ出てきています。

こうして講座を通じて継続的に生徒さんとの関係を深められるのは、とても嬉しいですね。

読書感想文指導者を各都道府県に3人置くことを目指して

子どもが書いた感想文を読む篠原先生。

ーー保護者や子どもたちにとって、単に読書感想文の書き方を教わる講座ではなくなってきているわけですね。

篠原先生:小学生のときに読書感想文講座を受けてくれた子が高校生になって、ぼくの自己推薦文講座を受講してくれたことがありました。大学受験のときに自己推薦文を書くからと言って来てくれて「あの時はありがとうございました。あれから本を読むのが好きになって」と話してくれました。

ただ受講生が増えてきたり、リピーターが増えたりするに連れて、キャンセル待ちをしてもらう方々も出てきてしまって。基本的には3時間コースなんですが、書き終わるまでは面倒見ると決めているので、長いときだと5時間、6時間かかる場合もあるんです。

そうすると午前と午後の2回開催したとしても、1日に最大20人ぐらい。対面だけではなくオンライン授業も開催しているのですが、講座の軸はブラしたくないので、それ以上はどうしても見られません。

それで、読書感想文を教えられる人が増えたらと思い、読書感想文指導者養成講座を開催することにしました。対面でもできるように各都道府県に3人ずつ講師を置くことを目標にしています。 

自信満々の子どもたちを日本に溢れさせたい

読書感想文講座受講生の子どもたちと。

ーー昨今、ChatGPTを始めとするAIの進化が著しいですよね。そんな時代で読書感想文の書き方を学ぶ意味を篠原先生はどのように捉えていらっしゃいますか?

篠原先生:AIはものすごく便利ですよね。現在はまだ読書感想文を完全にAIにお任せすることはできませんが、近い将来人間が何もしなくても書いてくれると思います。

以前は、クリエイティブ系の仕事はAIに代替されにくいと言われていましたが、最近になってクリエイティブ系の仕事こそAIに代替されるという意見も出てきました。

でもぼくは読書感想文のようなクリエイティブな作業は、失くならないと思っているんです。学校の先生が求める読書感想文の書き方は、もしかしたらAIが教えてくれるようになるかもしれません。でもぼくが教えているのは、もっと自由で、クリエイティブな読書感想文の書き方なんです。

ーー自由で、クリエイティブな読書感想文。

篠原先生:例えば、受講生の中には本の表紙に着目して読書感想文を書いた子もいました。もちろんあらすじには触れつつも「こういう物語だから表紙にこんな絵が書いてあって、こんな色使いで、こんなタイトルになっているのかもしれません」という感想文を書いたんです。

他にも、授業中におならをして先生に怒られたというワンシーンが書かれた本を読んだ受講生が「この本を読んでおならのことが気になって色々調べたら、おならは健康のバロメーターであることがわかりました。我慢したらいけないということがわかりました。だから、ぼくは先生に注意されてもこれからもおならをします」という感想文を書いた子もいました。

学校の先生からは、「そうか。先生はおならが健康のバロメーターであることは知らなかったよ。面白いな。教えてくれてありがとう」と言われたそうです。おそらく、先生や学校が求めていた「正解」ではなかったでしょう。

でも、ぼくはどちらの作文も、とっても面白いと感じます。他の人にはない視点で物事を切り取ることって、今のAIにはできないじゃないですか。

ーー確かにAIでは難しいかもしれないですね。

篠原先生: 読書感想文講座を受けに来る子たちは、親と喧嘩して、泣きながら挑戦してみたけど、全然書けなくて読書感想文を嫌いになってしまっています。書けないことで自信を失ってしまっているんですね。だけど読書感想文講座を受けて、自分の力で書き切れると自信満々になるんですよ。

大嫌いで苦手だった読書感想文を、ちょっとしたアドバイスをもらっただけで書けるようになった。それが大きな成功体験になるんです。

だからぼくは講座の中でも、子どもが書いた感想文をほとんど直しません。たまに親御さんから「ここの文脈がおかしいんだけど、先生直してくれないんですか?」と言われますが、「それより面白いと思いませんか、この感想文。よく頑張ったなと思いません?」と聞き返します。

ーー正しさよりも、本人が自分の手で書き上げることが大事だと。

篠原先生:大人が手を入れたら、確かに「正しい感想文」にはなるかもしれません。でも、学校の先生だってわかると思うんですよ。これは大人が手を入れたなって。それだったら直さなくていい。

それに1年後に、去年書いたものを読み返してみると、子どもの成長もわかります。「去年は文脈が間違っていたけど、今年は正しい文脈で書けた」みたいに、成長した喜びを子どもと一緒に感じられる方がいいじゃないですか。それは絶対、親子の宝物になります。

こういう体験はAIに頼っていたら、生まれません。だからぼくは今後も読書感想文講座をやっていきますし、教えられる大人をもっと増やして、自信満々の子どもを日本中に溢れさせられたらいいなと思っています。

ーー先生の講座を小学生のときに受けたかったなと思いました。素敵なお話をありがとうございました!

篠原先生の読書感想文講座はこちら⏬


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