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“礼儀とルールを重視し、安心できる学びの場をつくる”剣舞殺陣教室 寺西小百合先生 |ストアカ講師インタビュー
時代劇や歴史好きの女性たちを中心に人気の『剣舞殺陣教室』を運営する寺西小百合先生。
剣舞とは、刀や扇を持って音楽に合わせて舞う舞踊で、殺陣とは時代劇の剣戟(チャンバラ)シーンです。
体力的な差が少なく安心して楽しむことができるようにと、主宰の寺西先生は殺陣の教室では珍しい「女性限定の教室」を2015年に立ち上げました。
凛々しく袴に身を包み、思い切り刀を振り、非日常を味わうことができる寺西先生の講座には、毎月多くの新規生徒からの問い合わせが寄せられます。また、共通の趣味でつながるサードプレイスとして常連の生徒が多く通っています。
「安定した教室運営にはルールも必要」と話す寺西先生。礼儀を重んじる武道を取り入れた教室の先生ならではの一言です。「プラットフォームのルールを取り入れたおかげで教室運営がスムーズになった」と話す寺西先生に、講座の内容や運営の工夫など、詳しくお話を伺いました。
(取材日:2025年1月6日)
今回お話を伺ったストアカ講師
剣舞殺陣教室 右近流珠ゆり会
寺西小百合先生
日本舞踊家・孝藤右近に師事し、『刀エクササイズ』の上級インストラクターとして指導を行う。また、自ら設立した女性剣舞殺陣集団『雲組』を総合プロデュースし、多くの舞台に出演。2025年2月にはラオス大使館主宰の日本祭りにて師匠とともに剣舞出演を予定するなど、日本の伝統美を幅広く発信している。
・2020年にストアカ登録
・ストアカ教室ページはこちら:https://www.street-academy.com/steachers/466714
生徒から講師へ。日本文化の良さを伝えたい
――:ストアカ導入のご経緯からお聞きしたいのですが、寺西先生はなぜ剣舞や殺陣を教えるようになられたのですか?
寺西小百合先生(以下、寺西): もともとは、私自身も生徒から始まったんです。今から約15年前のことですが、現在の私の師匠である右近先生を「同じ石川県出身」というご縁で、知人から紹介いただいたことがきっかけです。
右近先生は、剣舞右近流家元であり、日本舞踊家でもあって舞台をメインに活動されている方です。日本舞踊の中で女形を演じたり、剣舞を取り入れたりする、一つのストーリー性を持った舞踊劇をやられていました。その中から「剣舞」を取り入れた「刀エクササイズ」という運動プログラムを始めたところ、「非常に面白い」ということで女性たちからとても人気が出たそうです。私自身もスポーツクラブなどで体を動かすことが好きだったので、この刀エクササイズをやってみたらとても面白くて、右近先生の教室に通い始めました。
最初は刀エクササイズだけの教室だったんですが、生徒たちが次第に主宰の右近先生の剣舞のかっこよさに憧れて、「自分たちもやってみたい!」と思い始めたんですね。それで剣舞のクラスが新たに設けられたのが2011年頃です。
その頃はちょうど「歴女」とか「お刀女子」という言葉が出たりと、時代劇や歴史が好きな女性がすごく増えた時期なんです。
その影響か、刀エクササイズにも剣舞のクラスにも新しい人がどんどん入ってくるんです。そうすると、どうしても経験者と初心者の間にギャップが生まれます。そのギャップを埋めるために、私が講師となりビギナークラスを担当することになりました。
結果として、当時担当したビギナークラスの生徒さんたちが、現在に至るまで続けてくれている形なんです。だんだんと活動の幅を広げて、2015年には自分で教室を立ち上げ、さまざまなイベントに出演するなどの活動も始めました。
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――:ベテランの生徒から講師へとなられたわけなんですね。もともとは、どのようなお仕事をされていたのですか?
寺西: もともとの専門は服飾関係なんです。実家が石川県で洋品店を営んでいまして、高校を卒業して服飾の専門学校に進むため、親に勧められて上京しました。それで、在学中に同級生からスタイリストのアシスタントを紹介されて、卒業後はフリーのスタイリストとして独立して仕事をしていました。主にファッション誌や芸能誌など、芸能人の雑誌の撮影時のスタイリングを担当するなど、多くの経験をさせていただきました。
現在は、剣舞の講師として、ストアカに掲載している教室に加えて、モデルスクールやスポーツジムなどでも剣舞や刀エクササイズを教える仕事のみをしています。
実家がパリコレブランドを扱う洋品店であったことや、スタイリストの仕事をしていた頃も合わせて、世代的にも海外志向が強かったのですが、剣舞に出会ったことで、日本の文化に触れる機会がとても増えました。
刀や着物を通じて日本文化を再学習することができたこと、日本文化の素晴らしさに気づけたことが本当に良かったですね。そして、それがまた生徒たちにも伝わるといいなと思っています。
――:ストアカは2020年から利用されていますが、何かきっかけがあったのですか?
寺西: そうですね、私のお教室を立ち上げて5年くらい経ってからストアカを利用し始めました。きっかけとしては、新規の生徒さんを増やして教室の規模を大きくしたかったことももちろんありますが、一番の理由は「体験者の無断キャンセル」を防ぐためです。
ストアカを利用する前は、自分のホームページや告知サイト、SNSを使って募集していました。基本的には申し込みを受け付けて、料金は当日お支払いという形式です。それで体験に来る方用に、刀や袴、帯などを毎回スーツケースに詰め込んで持ち運び、まるで行商人のように(笑)準備していました。
ところが、当日になって来ない方もいて、「せっかく持ってきたのに…」と感じることもありました。そこで、ストアカのようなサービスを利用し、事前に入金をしていただく仕組みに変えた方が、自分も気持ちよく受け入れができると思ったんです。本当にその点は大きくて、今でも一番助かっているところです。
袴を履き、刀を振る。非日常の体験を
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――:どのような講座を開催されていますか?
寺西:大きく分けて2つの講座を展開しており、まず1つ目は「剣舞クラス」です。剣舞は剣術の型を取り入れた舞踊で、着物を着て袴を履いて踊るので、刀を持って踊る日本舞踊というイメージでしょうか。音楽も、例えば「千本桜」や和風ロックっぽいものを使用しています。
もう1つは「殺陣体験」で、これは時代劇のチャンバラですね。実際にお芝居で使う刀を使用するところが特徴で、舞台や画面で観てきた役者さんの気持ちになって刀を振っていただきます。基本から始めて、2人、3人と相手を増やし、舞台で見るような殺陣の立ち回りを完成させていきます。
この2つの講座は基本的に同じ日程で、13時からと15時から続けて開催しています。
どちらの講座も1回の定員は15名に設定していますが、半数くらいの生徒さんは連続で2講座を受講されています。もちろん、それぞれ1つだけ受講しても問題ありません。
――:初めての参加でも袴を履いて受講するのですか?
寺西:はい、そうです。初めての方には、私が着付けから教えさせてもらっています。その際に、運動経験や、なぜ剣舞を習いたいと思ったのか、受講動機を聞いたり、舞台が好きな方であればその話を聞いたりしています。その時間がとても良いんですよ。
お稽古着については、常連さんには浴衣など、袖のあるものを着用することを推奨しています。剣舞の講座では日本舞踊の要素が入っているため、袖をつまむ所作があるんです。そのため、袖はある程度長い方が良いですね。舞踊は舞台で大きく見せることが大切なので、そのような衣装が適しています。
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――:生徒はどのような方が参加していますか?
寺西:私の教室は「女性限定」なので女性ばかりですが、年齢層で一番多いのは40代前後だと思います。もちろん、20代や60代の方もいらっしゃいますよ。
特徴としては、身体を動かす講座ですが、何も運動経験がない方が半分くらいで、和の文化や刀に興味がある人、舞台や映画、テレビの時代劇が好きな人が集まっている印象ですね。
それで、よく生徒さん同士で話題になるのは、『刀剣乱舞』が好きな方が結構多いんですよ。初めて参加した方も、共通の話題で意気投合している姿を見かけますので、趣味の友達ができるのも魅力の一つのようですね。
――:教える場所はどのようにされていますか?
寺西:都内の区民センターなどをお借りしています。実は、稽古をする会場にはこだわりがあり、できる限り日本国旗が掲げられている剣道場で開催するようにしています。やはり、こうした雰囲気のある場所の方が、特に初めての方にはワクワク感を感じてもらえると思うんですよ。
そんな贅沢なこだわりがあるため、理想的な会場を確保するのは大変ですね。「日程を増やしてほしい」というリクエストをいただくことも多々ありますが、現状ではなかなか叶えられないですね。
そのような状況ですが、空間や雰囲気づくりにこだわるのは、やはりおもてなしの部分が大事だと思っているからです。設備などのハード面と、内容などのソフト面、どちらも大切にしたいですね。
プラットフォームのルールを用いて守られる、教室の秩序と雰囲気
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――:ストアカを利用して良かったことを教えてください。
寺西:ストアカを導入したきっかけでお話した通り、お金のやりとりがスッキリしたことがやっぱり良かったですね。
私の教室では、ストアカのルールに基づき、受講予約のキャンセルや返金についての対応を行っています。ですので、キャンセル期限を過ぎた場合の返金は行っていません。
ストアカのシステムとしては、講座開催日から7日後までは講師側からは返金が可能ですが、講師の裁量による個別の特別対応は行わず、ストアカが定めるルールに従うことを基本方針としています。(※1)
ストアカでは予約した講座の開催日前にはリマインダーが送られる仕組みもありますし、生徒さん側からキャンセルできる期日も明確に示されています。また、キャンセル待ちをしている方もいらっしゃいます。ですので、公平に運営できる環境を保つためにも、生徒さんに対して正しい対応を心掛けることが重要だと思っています。
「ルールを守った上で講師として誠実に対応する」という姿勢を大切にし、生徒さんとの信頼関係を築いていきたいと考えています。
――:生徒の入金決済や予約については全員ストアカを利用しているのでしょうか?
寺西:基本的には予約や入金など管理はストアカのみとしています。ほとんどの生徒さんがストアカから事前決済をして参加されているので、既存の生徒さんについても、徐々にストアカから予約をしてもらうように促していきました。
教室の運営としては、窓口が1本化されるほうがスムーズですし、現金のやり取りはトラブルや手間の部分からも極力避けたいのが本音ではありますので。
――:ストアカを利用することで、新しい層にリーチできたと感じますか?
寺西: もう「発掘しまくり」という感じです(笑)。以前は、ほとんど刀が好きな人しか来なかったんですが、ストアカで募集を始めてから、たまに「ストレッチの講座を探していたら、たまたまこの講座を見つけて、興味を持ったので来ました」という方もいらっしゃいますよ。
ただ、ほとんどの方は「刀を振りたい」という明確な目的を持って来てくださいます。特に多いのが、「女性限定だから」という声をよくいただきますね。ストアカに出す前から私の教室には刀好きな方が集まっていましたが、ストアカに出してからは「世の中にはこんなに刀好きがいたんだ!」と感じるほど、新しい人たちにたくさん来ていただいています。
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――:やはり露出が増えたことで集客に効果があったということですね?
寺西: そうですね。露出が増えたことで、想像以上に「刀好き女子」を発掘できました。また、軌道に載せる初期の頃はもちろんですが、現在もレビューについては積極的に書いていただけるようにアナウンスをしています。
ストアカではレビューを書いたら次回予約で使える100円分のポイントをもらえるので、それは生徒さんに私から直接お知らせしています。やはり、クチコミは一番の集客ツールであり、新規の方には安心材料だと思いますので。
――:講座は「女性限定」とされているのはなぜでしょう?
寺西:教室の立ち上げ当初から女性限定にいるのですが、それは今振り返っても本当に大切な決断だったと思っています。やはり、女性にとって「安心できる」という点は、選択するうえで大きいと思います。例えば、スポーツクラブならしっかりとした運営体制があって安心感がありますが、私のような個人の教室だとトラブルに対応しきれない場合もあります。
それに、武道の分野では男性のほうが強いイメージがありますから、男性が多い場所では女性が少し遠慮してしまうこともあると思います。だからこそ、女性ばかりの環境を作ることで、より安心して楽しんでもらえる場にしたいと考えて「女性限定」としています。
――:ストアカのシステムやサポートについて、他にもメリットを感じている点はありますか?
寺西: 「受けたい登録」をしてくださっている方に、一斉にお知らせを送れることもメリットですね。現在、登録者数が600人ほどになっていて、年に1回の発表会やイベント開催の際に一斉告知ができるのは非常にありがたいです。反応はあまりないですが、それでも登録者リストは本当に宝ですね。
――:具体的にはどのようなお知らせを送られているのですか?
寺西: 例えば、今年の3月下旬には「さくらクルーズ」というイベントを企画していて、船に乗る楽しみを兼ねたものです。また、6月には金沢の「百万石まつり」に参加する予定です。このお祭りには簡単に参加できるものではなく、家元の右近先生が特別に踊る権利を持っているので、その枠を使って50人規模で参加します。当教室は、こういった特別な機会に参加できることも魅力のひとつです。
――:ストアカから初めて参加した生徒も、そういったイベントに参加できるんですか?
寺西: もちろんです。最初は初心者として来ても、こういった大きな発表の場に立てるチャンスがあります。それをきっかけにお稽古に興味を持ってもらえればと考えています。
楽しいイベントを配信することで、「こんなことをやっている団体なんだ」と知ってもらい、親近感を持ってもらうことが狙いです。「ちょっと行ってみようかな」と思ってもらえるきっかけになるといいなと。
また、ストアカのシステムで講座や開催日の案内を自動で送っていただけるのもすごく助かっています。その部分はこちらで何もする必要がないので、私たちは講座に集中できます。お稽古以外のお知らせ(例えば、殺陣に関する豆知識や最近の活動についてなど)を送ることで、未来の生徒さんとの距離を縮められるのが良いですね。
厳しさと楽しさのバランスが生み出す、安心できる学びの場
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――:教えるなかで大切にされていることはありますか?
寺西:礼儀を重視しています。私の講座では、最初に全員がそろって「日の丸にご挨拶をする」といったふうに、凛とした空気の中で、正座して礼をすることで、気持ちを切り替えて集中してもらえるんです。そして、遅れてきた人は、勝手に道場には入れず、扉の外で一旦待ってもらい、講師が迎えに行くまで入れません。
――:厳しい指導もされる一方で、楽しい雰囲気作りも大切にされているのですか?
寺西:そうですね、厳しい部分と楽しい部分のメリハリをつけています。武道のいいところを真似させてもらいつつ、時にはくだらない話で笑い合うこともあります。
ただ、出席管理やルールは厳しくしています。前列後列の位置も出席順で決めるので、稽古に真面目に来ている人を優先しています。厳しくしすぎると続けられない人も出てしまいますが、そこは顔を見ながら楽しんでいるかどうかを見て、無理のない範囲で声をかけるようにしています。
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――:長く続けやすい環境作りについて、工夫などはございますか?
寺西:みんなが安心して楽しめる場所にするためには、ある程度のルールを決めて守ってもらう必要があると思います。礼儀もその一つですね。とはいえ、あまり堅苦しくするのではなく、楽しく続けられることを重視しています。
生徒さん同士は、年齢や職業を気にせず、共通の趣味を通してつながっています。50代や60代の方も、「〇〇ちゃん」と呼び合うような、気軽な関係なんですよ。
ストアカから毎月のように新しい方は入ってこられますが、先輩の生徒が後輩に声をかけたりと、自然に新しく入ってきた人をサポートしてくれる雰囲気が私の教室にはあります。このおかげで、新しい方も入りやすくなっていますし、長く続けられる場になっているのではないでしょうか。
ですので、このコミュニティは私一人ではなく、生徒さんたち自身が支えてくれているものだと思っています。私自身も、皆さんに仲間として受け入れてもらっているような感覚ですが、講師として、皆さんのこの場所が安心安全であるように守っていきたいと思っています。
――:最後に、今後の展望をお聞かせください。
寺西:実は、海外の方からのオンラインレッスンの要望が増えてきているんです。インスタグラムを見て、「どうすれば習えるのか?」と、すごく意欲的な方もいらっしゃいます。ですので、できれば海外向けのオンラインクラスを実現できたら最高だなと思っています。
「剣舞をもっと世界に広げていきたい」という想いはずっとありますし、生徒さんたちと一緒に海外に行けたら最高じゃないかと思って! そんなふうに妄想を膨らませて、モチベーションにしています。
もう一つの目標として、クラスをもう一つ増やしたいと考えています。本当にストアカのおかげで、いろいろな方に体験に来ていただいているので、場所の確保の問題はありますがそこをクリアにして、もっと多くの方に楽しんでもらえるようにできればと考えています。
今後も新しい出逢いをつなぎながら、剣舞の日本文化の魅力を楽しくお伝えできればと思っています。