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コロナ禍の孤独な子育てと離職から救ってくれたもの。オンライン料理講師という働き方を多くのママへ伝えたい【森田早紀子先生】

 独身時代から大手料理教室にて10年間勤務し、店長やエリアマネージャーとしてキャリアを積んできた森田早紀子先生。第二子の出産と他県への転居、そしてコロナ禍が重なり、自粛期間の孤独な子育てを救ってくれたのは、オンライン子育てサロンと大好きなお菓子作りでした。しかし、そのお菓子が原因となり20キロの体重増加を経験したことをきっかけに、発酵料理を取り入れることに。さらに、コロナの影響で大手料理教室への産休復帰が叶わず離職され、オンライン料理教室「クックキュー」を開業。

 数々の予想外の出来事が重なり始まったオンライン料理教室ですが、開業から1年を目前とした今、森田先生は「全国のお母さんがオンラインレッスンをしたらいいのに」と話すほど、やりがいを感じていらっしゃるそう。  2020年から始まったコロナ禍と共に紆余曲折した森田先生に、これまでのお話と、オンラインで自宅で働くメリットなどたっぷりとお話頂きました。
 また、記事の最後には、森田先生から今回教えてもらった”砂糖を使わない発酵デザート”『甘酒キューブアイス』のレシピも記載しています。ぜひご覧ください。
(取材日2022年4月26日)



今回インタビューにこたえてくれた先生
森田早紀子(もりたさきこ)先生 
奈良県出身。全国各地を転勤したのち、現在は兵庫県明石市在住。
4歳と2歳の二児の母。
辻調理師専門学校卒業後、パティシエとして製菓店に勤務したのち、大手料理教室に転職。史上最年少で副店長、店長、エリアマネージャーへと昇進し、複数の店舗で合計1,000名のスタッフを育成。2021年にオンライン料理教室クックキューを開業し、「食べて痩せる」をコンセプトにした料理をストアカで教えている。
▷著書 「オンライン料理講師のススメ」
▷ストアカページ https://www.street-academy.com/steachers/559803

復職・再就職ともに叶わず、一念発起して開業へ


ー 教える活動をはじめたきっかけを教えてください
 
私は、もともとは料理講師ではなく、製菓の職人パティシエだったんです。
子どものころから母と一緒にお菓子作りをしていて、それがとっても楽しくてお菓子も大好きでした。ですので、辻調理師専門学校に進学して卒業後は晴れて地元の製菓店に勤務することになりました。
私が勤めていたお店は、製造するパティシエの部門はまさに職人の世界で、『絶対に喋るな』『技術は見て盗め』という雰囲気でした。
私はお菓子を楽しく作るのが好きだったこともあり、その雰囲気になかなか馴染めずにいました。そして、寸分狂いなく美しい製菓作りを求められるパティシエという仕事が性分的にもあっていなかったのでしょうね。仕事中も叱られてばかりでした。毎日が辛くて、あんなに大好きだったお菓子のことまで嫌いになりそうになりました。

そんななか、上司から「あなたは販売の方が向いているのでは?」と声がかかりました。
それをきっかけに店頭に立つことになったのですが、そうしたらお菓子の売れ行きがすごくて!私が売ると本当に全部売れるんですよ。自分でもびっくりしました。
それと同時に、私自身もお客さまと接することが楽しくて仕事にやりがいも出てきました。

販売の仕事に変わったことで「私は黙々と作ることよりも、話をしたりお客さんと触れ合うことの方が向いているんだな」と気づきました。
そこであらためて、話をしながらお料理ができる仕事を考えたときに「お料理の先生」という選択肢が浮かび、製菓店に2年勤務したのち、全国展開している大手料理教室へと転職しました。

ー大手料理教室から、どのようなご経緯で独立されたんですか?
 
実は、全く独立する気持ちはなかったんですよ!
ちょうど2020年に新型コロナウイルスの感染拡大と下の娘の出産が重なり、産休・育休に入りました。翌年、娘たちの保育園も無事に決まり、勤めていた料理教室へ復職する予定でした。

しかし、コロナの影響は私の勤めていた料理教室にももちろんありました。
勤務形態が変更になり、社員は全員、土日は8割出勤が義務づけられました。

保育園は日曜日はやっていませんし、会社員の主人にみてもらうのも毎週となると負担が大きすぎます。いま住んでいる明石市は主人の仕事の都合で転居してきたので、預ける祖父母も近くにはおらず、大手料理教室への復職は諦めるしかありませんでした。

ただ当時は早く次の就業先を見つけないといけない事情がありまして…。定食に就いていないと保育園の入園資格が取り消されてしまうので、急いでハローワークへ通いました。

でも、1つもないんですよ、私にできる仕事が。
「土日休みで9時〜18時の仕事であれば、なんでもやります!」と伝えてもコロナの影響で求人も激減。さらに調理の専門学校は高卒扱いになり、パソコンを使った仕事経験のない私に紹介できる仕事はないと言われました。
「土日出勤の条件をのんで、前の会社に戻った方がいい」とハローワークの方に提案されたほどでした。

「子どもを産むと、こんなにも働きにくい世の中なのか」と子育て家庭の厳しい現実を目の当たりにしましたが、とにかく仕事を見つけなくてなりません。

「無いものはしょうがない。無いのであれば作るしかない!」と一念発起して、オンライン料理教室『クックキュー』を開業したのが2021年の夏です。

開業から1年も経たないうちにストアカ人気講師としてメディアにも出演される森田先生


コロナ禍での乳幼児の大変な育児をオンラインコミュニケーションが救ってくれた


ーパソコンでのお仕事経験がないなか、なぜオンラインで教えることを選ばれたのですか?

  コロナの影響で大手料理教室もオンラインレッスンを取り入れたり、前職の同僚たちのなかで独立している人はオンラインで教え始めていたことも理由の一つです。
でも、一番のきっかけは開業を視野にも入れていなかったころの、産休育休中の私自身の体験です。

いま住んでいる兵庫県へは、主人の仕事の都合で2020年2月、ちょうどコロナが流行りはじめた頃に他県から転居してきました。
下の娘を出産したのも同じ頃です。
知り合いが一人もいない初めての土地で、0歳・2歳の育児が始まりました。

2020年春の緊急事態宣言のころは、公共施設や商業施設も休館、公園でさえ遊具に規制線が貼られていて「とにかく外に出るな」「人に会うな」「企業は出社を7割削減しリモートワークへ」と政府から要請が出ていた状況でした。

自宅マンションでの閉塞的な育児生活が始まりましたが、上の娘は活発な性格で、お部屋で静かに過ごすことなんて出来ません。
他の部屋も日中の在宅率が高いので、同じマンションの方から苦情がくるんです。

そのうえ、二人目出産ではよくあることだと思うのですが、上の娘の『赤ちゃん返り』もあって、とにかく手がかかるようになりました。通常でしたら、児童館などに連れ出して同年代の子と触れ合わせたり、外で思いっきり遊ばせたりしてやり過ごす期間だと思いますが、コロナ禍のなかそれも出来ません。

生まれたばかりの赤ちゃんのお世話、鬱憤が溜まっている上の娘、マンション住民からの苦情……、とにかく精神的に追い込まれていました。育児ノイローゼみたいになっていたと思います。

ー大変な自粛期間を過ごされていたのですね。何か解決方法はありましたか?
 
もともと上の娘は初めての育児だったこともあり、赤ちゃんのころから育児本などは頻繁に参考にしていました。ですので、「娘のこの状態をどうにかせねば」と、また必死の想いで幼児期の育児書を読むのですが、読めば読むほどに「私の接し方のせい?」と思ってしまい、さらに落ち込みました。

母である私の精神状態が悪いと、伝染するかのように娘の精神的状態も悪くなるという、まさに負のループでした。

そんな中、1冊の本と出会ったんです。

育児本なのですが、対象は子どもではなく母親。「ママのための保育園」を運営している団体が出版しているもので、読むと心がすごく軽くなっていきました。
そして、本の巻末にその団体が主催する「オンライン子育てコミュニティ」の案内がありました。主人にパソコンの電源の入れ方から教えてもらって、勇気を出してzoomで参加しました。

それまではオンラインに対しては何となくアレルギー反応があり、まったく利用したことがなかったのですが、オンラインコミュニティに参加してその先入観は一新されました。

主催されている先生からの学びはもちろんですが、参加されている他のママたちとの交流もあり、オンラインでの出会いは、孤独だった子育てから救ってくれました。

私の性格も関係しているのかもしれませんが、ママ友やリアルな人間関係がある友人・知人には本当の悩みを打ち明けることができませんでした。
しかし、オンラインで出会った方々には、気軽に本音の悩みを打ち明けることが出来たんです。
オンラインで交流している人たちは、いい意味で普段の私を知らない方。
地域活動や仕事などの人間関係がないからこそ、素直に何でも話せることってあるんですよね。

これは、オンラインならではの心の通い合いだと感じて、便利さだけではないオンラインの良さを実感しました。

ー自粛期間の日常生活にも変化がありましたか?
 置かれている環境は何一つ変わっていないのに、マインドが変わるとこんなに過ごしやすくなるものだとわかりました。オンライン子育てコミュニティのなかでも「もっとママの好きなこと、ママが笑顔になることをしてもいいんですよ」とアドバイスをもらいました。
『私の好きなこと』と考えたときに、思い出したのがお菓子作りでした。
それからは、上の娘と遊びの延長で毎日のように一緒にお菓子作りをして、自粛中のおうち時間を過ごすようになりました。娘も私もすごく楽しくて、とってもハッピーでした。最初の2ヶ月までは。

森田先生と娘さんたち。「ママの好きなこと」を一緒にすると家族みんなもハッピーに。

産後とコロナ太りから20キロ増!そして発酵料理との出会い


ー2ヶ月後に、ハッピーな母娘を揺るがすような事件が? 
ええありました、大事件です。
毎日のようにお菓子を作って食べていたら、私が75キロまで太ってしまったんですよ!産後太りも重なっていたので、今より20キロ増です。
私の専門はフランス菓子で、フランス菓子ってバターと砂糖をたっぷり使うのが特徴です。すごく美味しいのですが、すごくカロリーが高い(笑)。
さらに娘にも変化が。ある一定の時間になったら、「お菓子が食べたい!」と手が付けられないくらいの癇癪を起こすようになりました。「最初は自粛期間のストレスかな?」と思っていたのですが、明らかに様子がおかしくて。
よくよく考えてみたら、砂糖が入ったお菓子の食べ過ぎからくる『お砂糖中毒』になってしまっていたんです。

「このままではダメだ!」とお菓子作りはやめたのですが、甘いものの虜になってしまった娘の気が治ることはなく、困り果てていました。

そんなときにふと思い出したのが米麹を使った『甘酒』です。甘酒は砂糖は一切入っていないのに甘味が強く、ブドウ糖が主成分なので脳のエネルギーにすぐになってくれるのが特徴なんです。その甘酒を娘に飲ませてやると気持ちが落ち着いていき、2週間くらいで癇癪もおさまりお砂糖中毒からも離脱することができました。

それからは、砂糖の代わりに甘酒を使ってお菓子作りを楽しむようになっていきました。
さらに、お菓子だけではなく毎日のおかず作りにも甘酒や麹を取り入れたところ、特別なダイエットをしたわけではないのに私や主人もみるみる痩せていったんです! 私は一番太っていたころより20キロ痩せました。今は出産する前より5キロ痩せていて、体調もすごくいいですよ。麹を使うと食材も食べやすくなり、娘も苦手だったお肉料理が食べられるようにもなりました。

この経験を通して、お料理や食べることの大切さに向き合うきっかけになりました。
そして「好きなことは料理」とあらためて実感し、好きなことを仕事にさせてもらっていることに感謝の気持ちも湧いてきました。
育休から復職し、多くの生徒さまにお料理を教えることが楽しみでしょうがありませんでした。

砂糖を使わずに麹甘酒で甘味をつけたジェラートなどを考案した森田先生【レシピは記事最後】

数あるプラットフォームからストアカを選んだ理由


ー ですが結果として、ストアカで教えることになったのですね
 そうですね、ヤル気満々だったんですが復職叶わずでしたね(笑)
開業してオンラインでレッスンができるところを調べたところ、集客プラットフォームはストアカを含めて数社ありました。

「まずは生徒としてサービスを使ってみよう」と思い、候補の会社はすべて生徒登録して実際にレッスンも受講しました。
そのなかでストアカを選んだのは生徒さんたちです。
私が受講させてもらった先生の講座内容が素晴らしかったのも要因でしょうが、ストアカの講座で一緒に学んだ生徒さんたちは、皆さん本当に楽しそうに学ばれていてイキイキとされていました。
こんな素敵な生徒さんたちが集まってくるストアカという場に魅力を感じて、プラットフォームはストアカに決めました。

ー 実際にストアカで教えてみていかがでしたか?
 やっぱり素敵な生徒さんが多いですね。同じ主婦やママとして、生徒さんから学ばせていただくこともたくさんあります。

実は私、ストアカの第一回目のレッスンのとき、講座が終わってから寝込んだんです。パソコンが苦手ななかでの初めてのオンラインレッスンですので、緊張し過ぎたんでしょうね。もう、講座が終わったらぐったりで。

講座をしながら、内容がポーンと飛んでしまって頭が真っ白になってしまって!
その時参加されていた生徒さんのお一人がすごくストアカで受講慣れされていた生徒さんだったので、機転を利かして私のフォローに入って下さったというエピソードもあります。

ーオンラインで料理教室を開催することにメリットは感じてらっしゃいますか?

正直にお答えすると、前職に比べて、働く時間は半分・収入は2倍になっています。
私の場合は自宅のキッチンから配信をしているので、今までの通勤にかかっていた往復2時間の節約も大きいです。また自宅で仕事をしているので、家事は仕事の隙間時間にすることもできます。さらに、レッスンで教えながら作った料理がそのまま我が家の夕食になるのは、オンライン料理講師ならではのメリットだと思います。

保育園に娘たちを迎えに行くときには、夕食の用意から全ての家事がすでに終わっている状態なのが、勤めに出ていた時との一番大きな違いだと感じています。

ですので、夜はすべて子どもたちとの時間です。ゆったりとした気持ちで過ごせますし、たくさん話をしながら、子どもたちと同じ時間に一緒に寝ています。
そして、毎朝4時に起きて、レシピやテキスト作成などの仕事は朝のうちにしています。
最近は朝の時間を使って、ストアカで出会った今井先生のヨガ講座の受講にもチャレンジしています。
メリットは本当にたくさんあるので、普段からおうちでご飯を作っているお母さんやお父さんはみんなオンライン料理講師をすればいいのに!と本気で思っています。

ー教室運営が上手くいく秘訣などはありますか?
 
特別な秘訣ではないのですが、前職からの接客と同じで生徒さんのお声をしっかりとキャッチすることだと思います。参加理由や受講後の感想、生徒さんからいただくご希望にも教室運営のアイデアが詰まっていると思います。とにかく生徒さんに喜んで頂けるサービスを提供することです。

私の生徒さんはママ層も多いことからお子様連れが多い時には、zoom背景を子どもたちが好きなキャラクターにすることもあります。
オンラインレッスンですが、生徒さんが発信されるSNSをとおしてオンライン上での口コミでご紹介やお友達同士でのご参加も多くいらっしゃいますよ。

月額サービスで『発酵サークル』というコミュニティを運営していますが、お料理を教えるだけではなく、健康のことや育児の悩みなども話し合えるコミュニティでもあると思います。

ストアカ内月額サービス『発酵サークル』の生徒メンバー達と。生徒から先生デビューする人も。
その講師たちが活躍する場として、主催団体もスタートした森田先生。

家族も生徒も自分自身もハッピーになれる働き方がある


ー教える活動を続けているなかで嬉しかったことは何でしょうか?
 
生徒さんのなかから「私も先生のように料理の講師になりたい」と言ってくださる方が増えてきていることが嬉しいです。そのなかには、私と同じように小さなお子さんを育てているママもいらっしゃいます。
実は前職の料理教室に勤めていた時に、一番好きな仕事は講師の育成でした。
マネージャー職に就くと私一人がいくら頑張ったところで、お店やエリア全体の売上は上がりません。スタッフ一人一人がスキルを上げ、チームでの力が一番大切になってきます。そして、私はその仕事がとても好きだったんです。

当時の私は復職が叶わず、元いた場所には戻れませんでした。
でも、形は変わりましたが、自分自身で開業することで再び大好きだった育成の仕事をできるようになったことが本当に嬉しいです。

マネージャーとして店舗やエリアのスタッフたちと共に駆け抜けた会社員時代(中央が森田先生)


ー最後に、これから教える活動を始めたい方へメッセージをお願いします
 今は共働きが当たり前の時代になってきていると思います。
でも、共働きって何かを犠牲にして成り立っているイメージがありませんか?
子どもとの時間だったり、自分の睡眠時間だったり、好きなことをする時間だったり、もしかしたら健康を犠牲にしても頑張っているママもいるかもしれません。
私も二人目の産休までは育児をしながら正社員として勤務していたので、その大変さを痛感していました。
子どもを産むまでは、かなり仕事にウエイトを置いてきた生き方だったこともあり「子どもがいるとこんなにも生きづらいのか」と、正直思ったこともあります。

そして、私は本当に偶然の積み重ねにはなりますが、オンライン料理講師を仕事にすることができました。家族の時間も睡眠時間も何も犠牲にすることなく「好き」を仕事にしています。
私も家族も、そしてもちろん生徒さんもハッピーになる仕事があるということを、
もっと多くのお母さんに知って頂けるといいなと思っています。


===あとがき===
インタビューのなかで「いまこうやってクックキューを運営できているのは主人のおかげなんです」と何度も弾ける笑顔で言われていた森田先生。先生が苦手なパソコン作業のサポートや、電子書籍の出版にあたってはご主人が編集作業にも携わられたとか。とても仲の良いご夫婦の姿から、新しい共働きの形も拝見したような気持ちになりました。
森田先生、素敵なお話をありがとうございました。(取材・文 庭野ゆかり)

おまけ✨甘酒キューブアイスのレシピ

森田先生から、とっても簡単にできる手作りお菓子のレシピを今回、読者の方に向けて教えていただきました。
お砂糖なしでも甘みたっぷりだそうですよ。

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